「DX実行戦略 - デジタルで稼ぐ組織をつくる」を読んだ

Posted on 2019-11-12 , Tags: Degital Business Transformation, DX, Book Review

「DX実行戦略 - デジタルで稼ぐ組織をつくる」 を読んだので感想など書く。

所感

そもそも読もうと思ったきっかけとしては、最近「Developer Experienceではない方のDX」認知してから何度かPodcastや社内の雑談などで聞く機会があり、一度どんなものか知っておこうと思った、ということがある。 本の内容としては主にデジタルなプロダクトを今までやってこなかった比較的大企業がどうデジタルビジネスをとりこんでいくか、どう変革でき体制を作るか、というところが主眼となっていた。特にデジタルがどうというより「継続的に変革ができる組織構造にする」というところが協調されていると感じた。変革する体制ができればデジタルビジネスでも他のビジネスでも柔軟に受け入れる体制ができる、ということなのだろう。
Fearless Changeでも組織を新しい状態にすることの難しさにどう対応するか、ということが書かれていたが、本書のほうはよりトップダウン的なアプローチを大事にしているように感じた。

各章ごとの感想など

序章 なぜ今DXなのか

ここでは、デジタルディスラプション波の第2波がきており、既存企業対抗するために変革する必要がある、ということが書かれている。
本書ではデジタルビジネス・トランスフォーメーションを「デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを用いて組織を変化させ、業績を改善すること」と定義していた。つまり小手先のデジタル化ではなく、組織の変化、業務の改善を伴うものでなければならない、ということだ。

第1章 既存企業が抱える「変革のジレンマ」

既存企業は「規模」「相互依存性」「ダイナミズム」により、「もつれ」た状態にあり、これが変革を阻む要因になっているとのこと。では変革をうまくやるにはどうすればよいかというと「オーケストレーション」という言葉で説明されていた。オーケストレーションの定義としては「望みどおりの効果を得るために、リソースを動員し、機能させること」とのこと。
kubernetesが「オーケストレーションツール」と呼ばれるが、「望みどおりの効果=サービス運用すること」「リソース=コンテナ」と置き換えればイメージしやすいかもしれない。 変革のために社内外のリソース(人、データ、インフラ)を動員して全体としてうまく動くように協同を促すことが必要、ということのようだ。

第2章 戦略的な方向性を定める - 変革目標とは何か

変革をすすめるにあたり、とりあえず動いてしまいがちだが、まずは変革の目標を定めないといけない。この本では「カスタマーバリュー創出」「ビジネスモデル」「対応戦略」の2つを変革目標として先に設定することを提唱している。確かに、目標がないと間違った方向に進んでしまう危険性があるというのは普通に考えることだ。それが大きなプロジェクトであれば間違ったものを修正する際のコストが馬鹿にならないのだろう。

第3章 「変革目標」を打ち立てる

ここでは、前述の変革目標をどう設定するか、がチェックシートなどを用いて説明されていた。
また、変革理念の設定を提唱している。変革目標は企業内のあるチームの目標のレベルで、変革理念は企業全体の変革の方向性を決めるものとなる。PRISM(精確、現実的、包括的、簡潔、測定可能)なものが変革理念としてよいと述べられている。本書では扱ってないが、S.M.A.R.T.という似たような指標がある。こちらは理念ではなく目標に近いのでSpecificという単語も入っているのだろう。

第4章 リソースをかき集め、協働させる

変革理念、変革目標で方向性を定めたら、実際にリソースをかき集めて、協働を開始する。
本では8つの要素を楽器に見立てて、オーケストラで場面場面で必要な楽器が変わるように、変革に必要な「楽器」も変わる、と説明されている。変革目標から逆算的に必要な楽器をピックアップし、そこにリソースをあてる。この辺りはホラクラシーのサークルやロールに近いなと感じた。違いとしては、「楽器」はあらじめ種類が決まっている中からピックアップするが、ホラクラシーのサークル、ロールは必要なものを生み出すような形になるところだろうか。

第5章 オーケストレーションを機能させる8つの能力

オーケストレーションをうまく機能させるには以下の8つの能力がキーとなる、ということが述べられている。

  1. カスタマージャーニー・マップ作成
    • 変革してデジタルビジネスによって改善されたUXの設計
  2. ビジネスモデル設計
  3. ビジネスアーキテクチャ
    • サーバなどのアーキテクチャのように、人、データ、インフラのリソースをどのように配置するか、という設計
  4. 能力評価
    • 自社、自チームが何ができるか。ケイパビリティの評価
  5. コミュニケーションとトレーニング
    • 密に変革目標を共有する
    • 個人的には「ポエム駆動開発」という言葉が連想された
  6. 社内プラットフォーム
    • 社内で集まったデータをうまく学習して変革に活かしていくしくみづくり
  7. 社内ベンチャーファンド
    • 変革リソースとしてのお金がちゃんと確保される仕組み作り
  8. アジャイルな作業方式

第6章 オーケストレーションを推進する組織づくり

DXを推進したい企業ではよくCDO(Chief Degital Officer)のポストが作られているが、CTO(Chief Transformation Officer)を作るべきだ、ということが提唱されている。デジタルが目的ではなく、変革が目的、ということだ。若干従来のCTO(Chief Technology Officer)と紛らわしいので、個人的には微妙な感じがしている。とはいえC?Oの?の部分にはアルファベットだけだと26文字しかないので、かぶらないようにするのは難しいのだろう。

CTOの下には少人数の「変革推進室」を設置し、変革をオーケストレートする。また、組織にファブリック(布)をかぶせるように、各プロジェクト、各部署に変革の推進を行う役割の人を埋めこんでいく。部署として独立させてしまうとオーケストレートがやりにくい、とのことだ。

終章 企業がとるべき21のアクション

最後の章ではこれまででてきた話が21のアクションという形でまとめられていた。